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高知地方裁判所 昭和51年(わ)32号 判決 1976年5月25日

本店の所在地

高知市本町二丁目一番二一号

商号

有限会社安藤商店

代表者の住所

高知市堺町五番二一号

代表者の氏名

安藤久恵

本籍

高知市掛川町三九番地

住居

高知市堺町五番二一号

会社役員

安藤久恵

大正三年七月二二日生

右(有)安藤商店及び安藤久恵に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官吉田一彦出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告(有)安藤商店を罰金五〇〇万円、被告人安藤久恵を懲役六月にそれぞれ処する。

被告人安藤久恵に対し、この裁判の確定した日から二年間、右の刑の執行を猶予する。

理由

(罪となる事実)

被告(有)安藤商店(以下被告会社という。)は、料理仕出し、羊かんの製造販売等を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人安藤久恵(以下被告人安藤という。)は、被告会社の取締役でその業務全般を統括しているものであるところ、被告人安藤は、被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、公表経理上、売上の一部を除外し、これを架空人名義の簿外預金として蓄積するなどの方法により、その所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が別紙1修正貸借対照表及び同2修正損益計算書記載のとおり二、六五四万三、五八六円であつたのにかかわらず、昭和四八年二月二八日、高知市本町五丁目六番一五号所在の所轄高知税務署において、同署長に対し、所得金額は三四六万一、三五六円でこれに対する法人税額が八七万一〇〇円である旨の虚偽不正の法人税確定申告書を提出し、もつて、別紙3脱税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規法人税額九二七万七、五〇〇円と右申告税額との差額八四〇万七、四〇〇円を逋脱した。

第二  昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が別紙4修正貸借対照表及び同5修正損益計算書記載のとおり一、二六〇万四、六二五円(但し同記載の所得金額は一、二六二万六、四二七円となつているが内金二万一、八〇二円については逋脱意志がなかつたからこれを控除したもの)であつたのにかかわらず、昭和四九年二月二八日、前記税務署において、同署長に対し、所得金額は一一七万九、七九二円でこれに対する法人税額が二五万四、一〇〇円である旨の虚偽不正の法人税確定申告書を提出し、もつて、別紙6脱税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規法人税額四二九万三、四〇〇円と右申告税額との差額四〇三万九、三〇〇円を逋脱した。

第三  昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が別紙7修正貸借対照表及び同8修正損益計算書記載のとおり一、九八〇万七、一四二円であつたのにかかわらず、昭和五〇年二月二八日、前記税務署において、同署長に対し、所得金額は二二六万九、九九三円でこれに対する法人税額が四五万九、三〇〇円である旨の虚偽不正の法人税確定申告書を提出し、もつて、別紙9脱税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規法人税額六九七万六、六〇〇円と右申告税額との差額六五一万七、三〇〇円を逋脱した。

(証拠の標目)

以上の事実は、

一、被告人安藤の当公判廷における供述

一、被告人安藤の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の被告人安藤に対する質問てん末書(一二通)

一、被告人安藤作成の上申書(六通)

一、収税官吏の安藤三省、宗石弘子(四通)、前田澄枝(二通)、国澤健一郎、岡崎敬、亀山勉、戸田税、千島拓、山口等、北岡泰雄、武内章、堀川季子、川崎福重、中平泉、安並千代子(二通)、有吉経司(二通)、西川正次郎、堀田利徳、包国彦存に対する各質問てん末書

一、寺尾千恵子、小笠原泰代、佐竹良吉、吉村さつき、北村慎介、西田和寿子、山下美恵子、前田礼二、岸忠次、西岡明美、宮尾喜美、西岡真由美作成の各取引内容照会に対する回答書

一、山添芙美、山崎久子、五百蔵一幸、五百蔵一、滝本朱美、弘光扶美子、上村賀教、小林満博作成の各小切手裏書照会に対する回答書

一、藤中久子、松島貞夫、益強、福田義郎、飯野幸保ほか一名、松崎武美、明神種吉、安並千代子、亀山勉ほか一名、岡崎敬、石川和弘ほか一名作成の各上申書

一、寺尾真一、広田慶子、長嶋太良作成の各支払地代家賃照会に対する回答書

一、伊藤洋司、住本令子、西島敬子、西森靖子、寺尾真一、植木隆導、戸倉鉄良、宮本武治、安井淳補、氏原瑞穂、若枝義晴、岡崎敬、石川和弘ほか一名、武西勝彦(二通)、関田長生(二通)、森幹雄、細井暁、田村聖(二通)、小松睦弘、高野延寿、松崎正弘、竹崎正(二通)、尾崎純一、浜田昭二、岩崎利雄、鷲尾正成、菊地幸男、登良男作成の各証明書

一、近藤幸一(四通)、山本和子(二通)、岡内一征作成の各株式の異動及び支払配当金額照会に対する回答書

一、武西勝彦作成の手形貸付元帳写

一、収税官吏(国税査察官)直井正作成の告発書、脱税額計算書(三通)及び査察官調書

一、高知県中央県税事務所長竹島本作成の事業税の納付状況照会に対する回答書及び不動産取得税の納付状況照会に対する回答書(三通)

一、高知税務署長太田幸夫作成の所得税の納付状況照会に対する回答書(三通)及び証明書(二通)

一、高知市長坂本昭作成の市県民税の納付状況照会に対する回答書(三通)及び固定資産税の納付状況照会に対する回答書(三通)

一、登記官作成の登記簿謄本

一、押収してある(有)安藤商店の法人税決議書一綴(昭和五一年押第一五号の一)、元帳(47・1・1~47・12・31)一綴(同押号の二)、出納・当座帳(四七年度)一綴(同押号の三)、買掛・未払金帳(四七年度)一綴(同押号の四)、元帳(48・1・1~48・12・31)一綴(同押号の五)、現金・預金帳(四八年)一綴(同押号の六)、買掛・未払金帳(四八年)一綴(同押号の七)、元帳(49・1・1~49・12・31)一綴(同押号の八)、現金・預金帳(四九年)一綴(同押号の九)、買掛・未払金帳(四九年)一綴(同押号の一〇)、封入得意先カード一袋(同押号の一一)、封入預金利息計算書一袋(同押号の一二)、封入安藤関係預金メモ一袋(同押号の一三)、売掛帳一冊(同押号の一四)、売掛日報綴二綴(同押号の一五)、仕切書控綴(八冊)一綴(同押号の一六)、封入領収書一袋(同押号の一七)、封入領収書・請求書一袋(同押号の一八)、封入購入証明書一通(同押号の一九)、封入請求書一通(同押号の二〇)、四七年度源泉簿綴一綴(同押号の二一)、四八年度源泉簿綴一綴(同押号の二二)、四九年度源泉簿綴一綴(同押号の二三)、確定申告綴(47年分~49年分)一綴(同押号の二四)、封入安藤久恵に対する支払一袋(同押号の二五)、昭和四七年分譲渡所得実地調査書三綴(同押号の二六、二七、二八)、封入不動産売買契約書一袋(同押号の二九)、昭和四八年分譲渡所得納税相談申告審理調査書一綴(同押号の三〇)、不動産売買契約書七通(同押号の三一)、封入登記済権利証一袋(同押号の三二)、封入不動産売買契約書・領収書二袋(同押号の三三、三四)、封入領収書一袋(同押号の三五)、須崎市浦ノ内山林取得関係書類一通(同押号の三六)、元帳二綴(同押号の三七、三八)、経費帳二綴(同押号の三九)

を総合して認める。

(法令の適用)

一、判示所為 被告会社の各所為につき法人税法一六四条一項、一五九条一項

被告人安藤の各所為につき法人税法一五九条一項(いずれも懲役刑選択)

二、併合罪の処理 被告会社につき刑法四五条前段、四八条二項

被告人安藤につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をする。)

三、執行猶予 被告人安藤につき刑法二五条一項

以上によつて主文のとおり判決する。

(裁判官 山脇正道)

別紙3 脱税額計算書

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

<省略>

税額の計算

<省略>

対照表

昭和47年12月31日現在

<省略>

別紙1 修正貸借

<省略>

(注) 別紙10の説明参照

計算書

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

<省略>

別紙2 修正損益

<省略>

(注) 別紙10の説明参照

対照表

昭和48年12月31日現在

<省略>

別紙4 修正貸借

<省略>

<省略>

<省略>

(注) 別紙10の説明参照

計算書

自昭和48年1月1日

至昭和48年12月31日

<省略>

別紙5 修正損益

<省略>

<省略>

<省略>

(注) 別紙10の説明参照

別紙6

脱税額計算書

(自昭和48年1月1日 至昭和48年12月31日)

<省略>

税額の計算

<省略>

別紙9

脱税額計算書

(自昭和49年1月1日 至昭和49年12月31日)

<省略>

税額の計算

<省略>

別紙7 修正貸借対照表

昭和49年12月31日現在

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

(注) 別紙10の説明参照

別紙8 修正損益計算書

自昭和49年1月1日

至昭和49年12月31日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

(注) 別紙10の説明参照

別紙10

修正貸借対照表及び修正損益計算書の説明

第一 本件所得の確定は、財産増減法(いわゆるB/S立証)、即ち企業の一定期間の資産、負債の増加額、減少額を計算し、純資産の増加額により、その期間の利益を計算する方法によつているが、補充的に損益計算法、即ち一定期間の個々の利益を合計して純利益を計算する一方、この利益をあげるために必要なその期間の個々の損失を合計して純損失額を計算し、この両者の差引計算により、その期間の利益を算出する方法をも行つている。

なお、以下に記載の<1><2>等の番号は各貸借対照表及び損益計算書の勘定科目に付記した番号と対応するものである。

第二 修正貸借対照表

右表の資産の部・負債の部の各欄の記載事項は次のとおりである。

「公表金額」欄

被告会社が高知税務署長に提出した法人税確定申告書の基礎とした決算書の勘定科目及び査察調査により新たに発生した勘定科目につきその各金額を掲げたもの。

「過年度金額」欄

当該事業年度期首において保有していた資産、負債のうち、簿外(法人税確定申告書記載の所得金額計算の基礎としなかつたもの)の金額を掲げたもの。

「当期増減金額」欄

査察調査による資産の増加及び負債の減少を資産の部に、資産の減少及び負債の増加を負債の部に掲げてある。同欄「内犯則金額」欄記載の金額がほ脱の目的で除外されていたものである。

「差引修正金額」欄

「公表金額」「過年度金額」「当期増減金額」の合計額であり、事業年度末における実際残高を掲げたもの。

なお、勘定科目「当期利益金」欄に掲げた金額のうち、「公表金額」欄は被告会社の法人税確定申告書による所得金額を、「当期増減金額」欄は査察調査により増加した所得金額を、同欄「内犯則金額」欄は右増加した所得金額のうち不正な手段・方法により除かれていた増加所得金額をそれぞれ示し、「差引修正金額」欄に記載した金額が、被告会社の真実の所得金額を示している。

一 昭和四七年一二月三一日現在の修正貸借対照表(別紙1)

(一) 過年度金額

<1> 預金 五、四五四、五四五円

期首現在における簿外預金の残高で、被告会社が左表の仮名で預金していたもの。なお、査察調査により把握した預金のうち、これ以外のものは、被告人安藤、その養子安藤三省と安藤映子の夫婦、右夫婦の子供である安藤高・同圭ら(以下安藤家族と総称する)の個人に帰属するため、後述の個人収支計算に算入した。

<省略>

<7> 前期繰越金 五、四五四、五四五円

過年度金額に計上した資産の部の金額(右<1>の金額)と負債の部の金額との差額である。(右<1>に説明したものは前期までに除外した利益であるので、同額を前期繰越金としたもの)

なお、過年度において、売掛金の発生がないのは、売上除外を始めて(昭和四六年一〇月二〇日ころ)間もないことと、当初は現金売上のみを除外していたためと認められる。

(二) 当期増減金額

<1> 預金 一一、〇九四、一三二円

当期中に発生した簿外預金の増加額であり、その明細は左表のとおり。

<省略>

<2> 売掛金 二七〇、九五〇円

簿外売上のうち期末に売掛となつているもので、その明細は左表のとおり。

<省略>

<3> 未収利息 一四九、五二七円

簿外定期預金のうち、当期中に満期日が到来しているが、その預金利息の受領が翌事業年度になつているもの(期末における未収分)であり、その明細は左表のとおり。

<省略>

<4> 未払金 九、七七九、六二一円

<5> 仮受金 一、五一八、〇〇〇円

右<4>及び<5>は安藤家族(被告人安藤を含む)の個人収支による支出超過額であり、これを公表金額の仮受金、未払金から減算したものである。即ち、当期中における安藤家族個人の総収入金額と総支出金額を算出したところ、右収入金額を上回つた支出額(差引個人支出超過額)が認められたが、これは被告会社の売上除外金からなるものであるので、安藤家族の被告会社に対する公表帳簿に計上の債権額(被告会社からみれば債務額)である仮受金と未払金から、右支出超過額を順次減算したものである。このような個人収支の計算を行つた理由は、被告人安藤は、売上の一部を除外したものを、架空名義の預金として蓄積するほか、個人の正当収入金と全く混同して運用、資産化を実行しているため、資産取得又は費用支出のために充てられた、名義が個人名義を使用したものであつても、被告会社の資産として当然に見なければならない部分があり、その金額を確定する必要があつたからである。

右個人収支計算にあたつては、安藤家族の、給料報酬・受取地代家賃・被告会社及び関連会社等からの受取配当金・貸付金の利息及び元本の返済額・受取敷金・個人に帰属する預金利息・期中借入金の増加額・土地売却代金・有価証券売却代金等を個人の収入金とし、安藤家族の個人に帰属する預金有価証券貸付金の期中各増加額・土地取得額・生活費・生命保険料・公租公課等の支払額を個人の支出金とした。預金の個人・被告会社の帰属区分は、被告人安藤の供述を参考に個人実名預金については個人のもの、仮名預金については、被告会社が不正経理を始めた昭和四六年一〇月以降に新規発生したものは被告会社のもの、同年九月からあるものは個人のものとして処理した。

個人収支計算の明細は左表のとおり。

<省略>

<省略>

右支出超過額一一、二九七、六二一円は、前記のとおり、仮受金公表金額一、五一八、〇〇〇円からまず優先的に減算し、不足分は未払金公表金額一三、八九六、四一七円から減算した。

<6> 価格変動準備金 二七〇、〇〇〇円

青色申告書提出取消にともない、価格変動準備金繰入額を否認したもの。

以上<1>から<6>まではいずれも犯則所得であり、合計すると

犯則所得計 二三、〇八二、二三〇円

となる。

二 昭和四八年一二月三一日現在の修正貸借対照表(別紙4)

(一) 過年度金額

この表の「過年度金額」欄は、前事業年度の「過年度金額」と「当期増減金額」とを加減算した金額である。

(二) 当期増減金額

<1> 預金 五、一四七、六六三円

当期中に発生した簿外預金の増加額であり、その明細は左表のとおり。

<省略>

<省略>

<2> 売掛金 △二七〇、九五〇円

四九四、八二〇円

減少額二七〇、九五〇円は、前期末に計上した簿外売掛金の当期中の入金額であり、その明細は左表のとおり。

<省略>

増加額四九四、八二〇円は、簿外売上のうち期末に売掛となつているもので、その明細は左表のとおり。

<省略>

<3> 商品 四、〇〇〇、〇〇〇円

昭和四八年一一月三〇日、いわゆる狂乱物価による砂糖不足に際し、ブローカー田代政義から買入れた砂糖(仕入価格四、〇〇〇、〇〇〇円)が期末に全額簿外在庫となつていたので加算したもの。

<4> 未収利息 △一四九、五二七円

前期末において、未収利息に計上した簿外定期預金利息が、当期中に入金となつているので減算したもの。

<5> 什器備品 一、〇〇〇、〇〇〇円

(株)土佐冷機から買入れたシヨーケース(代金一、〇〇〇、〇〇〇円)が簿外となつているので加算したもの。

<6> 未払金 三、七〇〇、〇〇〇円

<7> 仮受金 二二〇、六六七円

右<6>及び<7>は安藤家族の個人収支による支出超過額であり、これを被告会社の債務である公表金額の仮受金、未払金から減算したもの。

個人収支計算の明細は左表のとおり。

<省略>

<省略>

<8> 価格変動準備金 三二二、〇〇〇円

△二七〇、〇〇〇円

当期及び前期の青色申告書提出取消にともない、当期に繰入れ・繰戻しをしている価格変動準備金の否認(三二二、〇〇〇円)・容認額(二七〇、〇〇〇円)である。

<9> 未納事業税 △二、七六九、八四〇円

前期の増加所得金額二三、〇八二、二三〇円に対し賦課される(未納)事業税を当期の損金(未払金)として認容したもの。

以上<1>から<9>まではいずれも犯則所得であり、これらを合計(△は差引)すると

犯則所得計 一一、四二四、八三三円

となる。

なお、当期増減金額のうち

クーポン 二一、八〇二円

は、旅行斡旋業者から受領したものであるが、経理担当者(前田澄枝)の事情で現金化が遅延したため、公表帳簿に計上洩れとなつていたもので、ほ脱の犯意が認められず、「その他所得」として処理したもの。

三 昭和四九年一二月三一日現在の修正貸借対照表(別紙7)

<1> 預金 八、四四九、二七三円

△二、五七〇、三三一円

当期中の簿外預金の増加額及び減少額(普通預金)であり、その明細は左表のとおり。

<省略>

<2> 売掛金 △四九四、八二〇円

四四九、九七〇円

減少額四九四、八二〇円は、前期末に計上した簿外売掛金の当期中の入金額であり、その明細は左表のとおり。

<省略>

増加額四四九、九七〇円は、簿外売上のうち期末に売掛となつているもので、明細は左表のとおり。

<省略>

<3> 商品 △四、〇〇〇、〇〇〇円

前期末簿外在庫となつていた砂糖は、当期に全量、売上として払出されているので、減算したもの。

<4> 未収利息 一四、四四五円

簿外定期預金のうち、当期中に満期日が到来したものの預金利息の期末未収分であり、その明細は左表のとおり。

<省略>

<5> 貸付金 一三、六一八、七二九円

<6> 未払金 七二四、六八九円

<7> 仮受金 二、三六五、三三三円

右<5><6>及び<7>は安藤家族の個人収支による支出超過額であり、これを公表計上の債務である仮受金及び未払金から減算し、残額を貸付金としたもの。

個人収支計算の明細は左表のとおり。

<省略>

<6> 未払金 △八二、七五九円

中央卸売市場販売所で販売した羊かんについては、専属販売員宗石弘子に販売手数料一三%を支払つているが、期末に売掛になつている羊かん売上に対する販売手数料が未払であるので、未払金として加算したもの。

<8> 価格変動準備金 六九四、〇〇〇円

△三二二、〇〇〇円

説明は過年度に同じ。

<9> 未納事業税 △一、三〇九、三八〇円

前期の増加所得金一一、四二四、八三三円に対する未納事業税。

以上<1>から<9>までを合計(△は差引)すると

犯則所得計 一七、五三七、一四九円

となる。

なお、所得金額には影響はないが、当期末の勘定科目を修正したものに

預金 二、〇〇〇、〇〇〇円

未収入金 △二、〇〇〇、〇〇〇円

がある。これはレストラン味間からの四九年七月から同年一〇月までの間の家賃二、〇〇〇、〇〇〇円が未収入金(未収家賃)として公表計上されているが、同金額は入金となり、通知預金となつているので修正したもの。

第三 修正損益計算書

右表の収入の部・支出の部の各欄の記載事項は次のとおりである。

「公表金額」欄の説明は、修正貸借対照表のそれに同じ。

「当期増減金額」欄

査察調査による利益の増加及び損金の減少を収入の部に、損金の増加及び利益の減少を支出の部に掲げてある。「内犯則金額」欄記載の金額が、右のうち不正計算によるものである。

「差引修正金額」欄

「公表金額」「当期増減金額」の加減算額であり、当該事業年度分の各勘定科目の実際所得金額を掲げたものである。

一 昭和四七年度事業年度の修正損益計算書(別紙2)

<1> 売上 二六、三四一、七七五円

当期中に販売した商品の〓〓〓、公表帳簿外の売上金額であり、次のものから成る。

(一) 羊かん部売上除外金 〓〇、三二二、二〇〇円

専属販売員宗石弘子に預入されていた架空名義の普通預金二口座の預入額である。

(二) 仕出し部売上除外金 一五、七四八、六二五円

被告人が預入していた架空名義の普通預金二口座の預入金から、家賃収入金・有価証券売却金・貸付戻り金・他預金からの預け替え金等の非売上金を控除して算定したもの。

(三) 期末簿外売掛金 二七〇、九五〇円

当年度末B/S売掛金の説明に同じ。

<2> 給料及び手当 △二、〇八八、〇〇〇円

従業員に対し、公表帳簿外に支払つた給与の合計額である。

<3> 支払手数料 △一、三四一、八八二円

公表帳簿外の売上となつている羊かんの売上について、担当者宗石弘子に対し支払つた簿外の支払手数料を認容したもの。

<4> 雑収入 二四二、九七八円

公表帳簿外の普通預金、定期預金、通知預金の受取利息を雑収入としたもの。

普通預金利息 三六、九〇二円 四七年一月から一二月の間の利息

定期預金利息 二〇二、八四一円 〃

通知預金利息 三、二三五円 〃

合計 二四二、九七八円

<5> 価格変動準備金繰入 二七〇、〇〇〇円

青色申告書提出取消しにともない、価格変動準備金繰入損として損金に算入されない額

<6> B/Sとの不突合額 △三四二、六四一円

以上<1>から<5>までのものはいずれも犯則所得と認められるので、これらを合計すると二三、四二四、八七一円となり、修正貸借対照表による犯則所得金額である二三、〇八二、二三〇円との間に三四二、六四一円の差額が生ずるので、この金額を修正損益計算上損金の科目として計上したもの。

以上<1>から<6>までを合計すると

犯則所得計 二三、〇八二、二三〇円

となる。

一 昭和四八年度事業年度の修正損益計算書(別紙5)

<1> 売上 一九、七五九、四八六円

当期中販売した商品のうち、公表帳簿外の売上金額である。

算出の基礎となつた期中の仮名普通預金は羊かん部一口座、仕出し部三口座であり、羊かん部の売上除外金は、預入金一三、三一四、七一八円と売掛金増加分二二三、八七〇円であり、仕出し部の売上除外金は六、二二〇、八九八円である。

<2> 仕入 △四、〇〇〇、〇〇〇円

砂糖の簿外仕入額。説明は四八年B/S商品の項に同じ。

<3> 期末商品 四、〇〇〇、〇〇〇円

<2>の商品の期末たな卸高である。

<4> 給料手当 △二、六二八、〇〇〇円

簿外の支払給料。確定方法は過年度分に同じ。

<5> 公租公課 △二、七六九、八四〇円

前年度分の増差所得に対する未納事業税を、当期の損金として認容したものである。(四八年B/S未納事業税の項参照)

<6> 支払手数料 △二、七三〇、九〇六円

宗石弘子に対する期中の簿外支払手数料一、七三〇、九〇六円と、材料の簿外仕入の斡旋料として田伏政義に対し支払つた手数料一、〇〇〇、〇〇〇円との合計額である。

<7> 雑収入 五五四、四六〇円

簿外の普通預金等の受取利息である。

普通預金利息 四五、四九三円

定期預金利息 五〇四、一五九円

通知預金利息 四、八〇八円

合計 五五四、四六〇円

<8> 価格変動準備金繰戻し △二七〇、〇〇〇円

前期において青色申告書提出取消しにともなう価格変動準備金の繰入損を否認したが、これに対応する繰戻し額を当期認容し、益金から控除したもの。

<9> 価格変動準備金繰入額 三二二、〇〇〇円

過年度分説明に同じ。

<10> B/S不突合額 △八一二、三六七円

過年度分説明に同じ。

以上<1>から<10>までを合計すると

犯則所得計 一一、四二四、八三三円

となる。

なお、犯則所得以外に当期分の所得金額を増加させるもの(その他所得)として

売上 二一、八〇二円

がある。これは、クーポンによる商品の売上であるが、決算時計上洩れとなつていたものである。

三 昭和四九年度事業年度の修正損益計算書(別紙8)

<1> 売上 二八、一三〇、五二七円

過年度分の説明に同じであり、算出の基礎となつた仮名普通預金は羊かん部二口座、仕出し部六口座である。前期同様の計算により羊かん部売上除外金は一七、四一三、一三〇円(右二口座の預入額一七、四五七、九八〇円と売掛金減少額四四、八五〇円との差額)であり、仕出し部売上除外金は一〇、七一七、三九七円(右六口座の預入額から非売上金を控除したもの)である。

<2> 期首商品貯蔵品 △四、〇〇〇、〇〇〇円

期首における簿外の棚卸高を当期の損金として認めたもの。

この内容は過年度の期末商品に同じ。

<3> 仕入 △二、八八〇、〇〇〇円

当期中の簿外仕入。

<3> 仕入 一、六六五、〇〇〇円

前年度において簿外で仕入れた砂糖四、〇〇〇、〇〇〇円は、当年度で一部公表に計上されている(公表計上仕入額一、六六五、〇〇〇円)ところ、前年度右四、〇〇〇、〇〇〇円を全額損金と認めたので、当年度は右一、六六五、〇〇〇円を損金としては否認したものである。

<4> 給料 △四、二三八、〇〇〇円

確定方法は過年度分に同じ。

<5> 公租公課 △一、三〇九、三八〇円

前年度分増差所得に対する未納事業税を当期の損金として認容

<6> 支払手数料 △二、七五二、二九一円

宗石弘子に対するもの。

<7> 雑収入 七〇六、六九〇円

簿外預金の受取利息であり、普通預金利息四五、五五〇円、定期預金利息六四六、二一八円、通知預金利息一四、九二二円の合計額である。

<8> 価格変動準備金戻し △三二二、〇〇〇円

<9> 価格変動準備金繰入 六九四、〇〇〇円

<8>及び<9>は前年度分説明に同じ。

<10> B/S不突合額 一、八四二、六〇三円

以上<1>から<9>までのものは、いずれも犯則所得であるが、これらを合計すると一五、六九四、五四六円となり、修正貸借対照表による犯則所得金額一七、五三七、一四九円との間に一、八四二、六〇三円の差が生ずるので、これを修正損益計算上益金の科目に掲げたもの。

以上<1>から<10>までを合計すると

犯則所得計 一七、五三七、一四九円

となる。

以上

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